スリランカ、コロンボのスラム街潜入記(スレイブアイランド・マハワッタ)|治安・生活費・撮影のマナー

どこにでもガイドブックには載らない「別の顔」がある。
今回コロンボの訪問で足を踏み入れたのは、再開発が進む「スレイブ・アイランド(Slave Island)」と、川沿いの密集地「マハワッタ(Mahawatta)」周辺だ。

スリランカ、コロンボの「スラム」はどこにあるのか

Googleマップ航空写真での「見分け方」

現地に行かずとも、スラムの位置を特定する方法がある。Googleマップの航空写真を見れば一目瞭然だ。

コロンボの一般住宅地域のGoogleマップ航空写真
【一般地域】道路が直線的で区画が整理されている
コロンボのスラム密集地域のGoogleマップ航空写真
【スラム地域】区画が不自然で密集している
エリアの種類航空写真での特徴
一般の地域区画が整理され、道路が直線的である。
スラム(貧困地区)自然発生的に街が拡大しており、区画が整理されておらず行き止まりが多い。屋根の色が不揃いで、赤サビ色のトタン屋根が目立つ。

特に川沿いや線路沿いの「不自然な密集地帯」は、間違いなくスラムである。今回はその中でも、川沿いにある巨大な団地エリアを目指した。

コロンボ川沿いに密集する古びた集合住宅(スラム団地)
川沿いに密集する古びた集合住宅(団地)

「朝のスラム」を歩く:エリア別レポート

スラム取材において、私が徹底している鉄則がある。それは「朝に行くこと」だ。

なぜ「朝」なのか?強盗と活動時間の相関

スラム街は一般的に貧困層が多く、物乞い、スリ、強盗のリスクと隣り合わせだ。特に女性は細心の注意が必要である。

しかし、犯罪者の多くは夜行性だ。朝っぱらからリスクを冒して強盗を働く人間は少ない。朝の時間は、住民たちが仕事に向かい、子供が学校へ行く「生活の時間」であり、比較的治安が安定している。
実際、この日も朝の空気は張り詰めておらず、生活の匂いが漂っていた。

💡 旅のTIPS:治安の悪い地域は「朝」行くべし
理由:誰しも朝から犯罪する元気はない

① 川沿いの密集地「マハワッタ」の裏路地

まずは川沿いのエリア、マハワッタへ。
ここは巨大な「団地」と、その隙間を縫うような裏路地で構成されている。

マハワッタ地区の生活感あふれる裏路地
生活感あふれる裏路地
スラム街でリヤカーを引き野菜を売る男性
野菜を売って生計を立てるおじさん

路地に入ると、リヤカーを引いて野菜を売るおじさんとすれ違った。
彼らはこうして日銭を稼ぎ、家族を養っているようだ。
建物の老朽化は進んでいる。

② 迷宮と化した「スレイブ・アイランド」

続いて、再開発の波が押し寄せている「スレイブ・アイランド」へ。
ここはイスラム教徒が多く住むエリアのようで、ニカブやヒジャブを身にまとった女性の姿が目立つ。

スレイブ・アイランドの路地に停まる多くのトゥクトゥク
イスラム色の強いエリア。至る所にトゥクトゥクがある
コロンボの路地裏で暮らす猫たち
路地裏の猫たち

私は常に動物用の餌を常備している。

特徴的だったのは、路駐されているトゥクトゥクの多さだ。
住民の多くがドライバーとして生計を立てているのだろう。また、軒先では「闘鶏」用の鶏が飼育されており、様々な方法で生計を立てていることがわかる。

路地で座り込んでいるおじさんと目が合い、少し話した。
おじさんは「俺の写真を撮ってくれ」としきりに言ってきた。

スラム街で笑顔で写真撮影に応じる現地の男性
写真に応じてくれた笑顔の男性

「視線」で危険度を測る

実際に被害には遭わなかったが、私は「外国人である私に向けられる視線」でその場の危険度を測っている。私の感覚的な指標だが、以下が一つの目安になるだろう。

  • 安全(Safe):無関心。現地に溶け込めている。
  • 注意(Caution):外国人が珍しいという「好奇の目」
  • 危険(Danger):粘着質な視線、または複数の視線が集まる状態。

住環境とインフラの実態【データ調査】

歩いてみて気づくのは、人間以外の動物の多さだ。牛、鳥、犬、猫がゴミ山と化した路地で共生している。この「ゴミ山」の裏側にある、彼らの生活実態を数値で紐解く。

家賃と居住スペース

このエリア(スレイブ・アイランド周辺の古い長屋やマハワッタ)の住環境は過酷だ。違法建築により家賃を払っていない居住者もおり、相場は以下の通りである。

広さ約8畳〜22畳
※この狭小空間に3世代・5〜7人で住む
家賃相場月額 0〜18,000ルピー(0〜9,000円)
※再開発エリアの立ち退き対象外物件

水道・衛生の崩壊

「川沿いの団地」と書いたが、その川や運河はゴミ捨て場を兼ねているケースが多い。

  • トイレ:5〜10世帯で1つを共有。朝はトイレ待ちの行列ができる。
  • 水:20世帯以上で1つの水道蛇口をシェアすることも珍しくない。

衛生環境は劣悪であり、デング熱などの感染症リスクは常に高いレベルにある。

貧困のリアル:収入と食卓

彼らの生活を支えているのは、日雇い労働だ。

仕事がない:日当と月収の現実

主な職業は、市場での荷運び(ナタミ)、建設作業員、トゥクトゥク運転手などである。

重い荷物を運ぶコロンボの日雇い労働者
重い荷物を運ぶ日雇い労働者
  • 日当:2,500〜3,500ルピー(約1,250〜1,750円)

一見、悪くない額に見えるが、不況で「仕事が週に2〜3日しかない」ということもしばしばあるらしい。その結果、月収は35,000〜50,000ルピー(約1.7万〜2.5万円)程度となっている。

1食60ルピーのカレー

観光客がレストランで食べる1食2,000ルピーの食事は、彼らの10日分の食費に相当する。彼らのリアルな食事(自炊)の内訳が以下の通りだ。

食材1食分の分量・内容原価 (LKR)原価 (円)
米 (最安値)約150g
※キロ200〜220ルピー
33 LKR16.5 円
パリップ豆のカレー
※具は豆のみ
7 LKR3.5 円
ポルサンボルココナッツ1/8個分+唐辛子・塩
※貴重な脂質と味付け
15 LKR7.5 円
合計「基本カレーセット」60 LKR30 円

山盛りの米と、豆カレー、辛いココナッツのふりかけ。
1日の食費はわずか180ルピー(約90円)で済む計算。

撮影のマナーと「隠し撮り」の作法

最後に、スラム街へ行く旅行者へ心構えを伝えたい。

スラムは動物園ではない:カメラを向ける暴力性

スラム街は観光地ではない。
自分が逆の立場ならどう思うか。通勤途中や自宅の前で、見知らぬ外国人からいきなりレンズを向けられたら不快だろう。「写真を撮らせてください」と許可を取るか、あるいはカメラを出さないのが基本のマナーだ。

動画を回しっぱなしにするテクニック

それでも、この「等身大の生活」を記録したい場合、私は以下の方法をとっている。

🎥 威圧感を与えない撮影術
  1. スマホをズボンに挟む:
    カメラレンズだけを出し、録画状態にして腰の位置に固定する。
  2. 歩き撮り:
    立ち止まって構えるのではなく、あくまで歩行中に自然に映り込む映像を狙う。

これなら「カメラを向けられている」という威圧感を相手に与えず、自然な生活の様子を記録できる。もちろん、推奨される行為ではないが、トラブルを避けつつリアルを映す一つの手段である。


引用・参考文献

本記事の数値データおよび背景情報は、以下の現地機関・報道を参考に作成しています。

  • HARTI (Hector Kobbekaduwa Agrarian Research and Training Institute)
    スリランカ農産物価格・市場データ
  • Department of Census and Statistics (Janalekana)
    Official Poverty Line (OPL) / コロンボ地区最低生活費統計
  • Urban Development Authority (UDA)
    Slave Island Redevelopment Project (Kompanna Veediya)
  • Lankadeepa (Online Edition)
    生活費高騰・消費者物価に関する報道 (Cost of Living News)

スリランカの入国審査や空港でのSIM購入、両替のリアルな実情については、以下の記事で詳しく解説しています。

👉 【スリランカ2026】入国審査と空港SIMの罠。コロンボへの移動と両替レート

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