エジプト・カイロの治安事情
エジプト・カイロの治安は、観光地や富裕層エリアと、非公式居住区(スラム)で二極化しています。ピラミッド周辺や、大通りなどは基本的には安全ですが、スリやひったくりなどの軽犯罪が増加傾向にあります。
エジプトは表現への規制が強く、貧困問題を取材するジャーナリストが拘束される事例が多数報告されています。スラムや貧困地区へ入る際の最大のリスクは、スリなどの一般犯罪ではなく「マバーヘス(私服警察・情報機関)」の存在です。彼らはカフェで水タバコを吸う男性や、路地の清掃員に完全に擬態し、監視活動を行っています。スラムなどに露骨にカメラを向けた場合、カメラやスマートフォンのデータを物理的に破壊されるリスクがあります。
Googleマップでのスラムの見分け方
現地へ向かう前に、スラムの形成エリアはGoogleマップの航空写真から把握可能です。


赤レンガの建物が密集しているエリアは、典型的な非公式居住区です。
カイロで最も危険なスラム・エリア4選
カイロ最悪「インバーバ」と「エズベット・エル・ハガナ」
カイロ北西部に位置する「インバーバ(Imbaba)」は、ギャング活動や麻薬密売が蔓延しており、カイロで最も危険視される地区の一つです。インフラが崩壊したスラム街が広がっています。

新興都市ナスル・シティの隣に位置する「エズベット・エル・ハガナ(Ezbet el-Haggana / 現: Madinat al-Amal)」は、100万人以上が居住する最大級のスラムです。

頭上を巨大な高圧送電線が走り、足元には下水が漏れ出しているなど、極めて危険な住環境となっています。
【実体験】私が潜入したスラム
スラム潜入記①Nazlet Abou Gomaa
ピラミッド近くのこの場所(Nazlet Abou Gomaa)はそこまで治安が悪くなく、英語表記のお店もあり、ボール遊びをする子供などもおりました。ただ表通りに比べて物価は1/5程度。大通りで2,300円くらいのケバブがだいたい50円ぐらいで買えました。
とは言ってもやはりスラム。現地の子供たちがずっと追いかけてきて、アジア人の私に興味深々。「写真とって!」と、カメラを向けるとこの様。ポーズをこれしか知らないのでしょうかね。

スラム潜入記②Ezbet Khairallah
カイロの街は大きくナイル川で分断されておりますが、2つ目に向かったスラムはナイル川すぐ東にあるこの地域(Ezbet Khairallah)。ここは先述の赤レンガでできた建物の方が乱立しており、居住区と人が集まるエリアが明確に分かれており、居住区付近はかなり湿った暗い雰囲気となっておりました。

そのエリアに足を踏み入れた時、私は地元の兄ちゃんに絡まれ、腕を掴まれたので振りほどき逃げるように歩いていると、おそらくそのスラムで唯一英語が話せるであろう少年と出会い、「ここにいるのは危険だ、駅まで迎えに行ってあげる」と携帯を取り出し誰かに連絡をすると、その車を運転していたのはなんと12歳の少年でした。

ずっと「money money」と言っていてうるさい。
駅に着くと緊張がとけ、お腹がすいたので近くにある出店でケバブのような謎料理をいただくことに。1個15円。さすがに今まで行ったどの国のどの料理よりも一番安い。

しかも奥にうつっているピクルスのような謎漬物も食べ放題。美味しくいただきました。
スラムと表の街の「生活・物価」の圧倒的格差
家賃タダ同然の非公式建築と交通費の矛盾
ザマレクやマーディ、ナスル・シティといった表の街(Formalエリア)では、家賃が国際基準に近い価格帯に設定されています。一方、スラム(Informalエリア)は公有地や農地を不法占拠した未完成建築であるため、家賃は無料か、ブローカーに支払う少額の場所代のみです。
スラムの青空市場では食料品が底値で購入できますが、都市の周縁部にあるため、表の街へ出稼ぎに行くための「交通費」が家計を大きく圧迫する矛盾が生じています。また、インフラコストの概念も異なり、スラムでは電線を違法に引っ張って「盗電」しているケースが一般的です。
公共サービス予算の格差と崩壊するインフラ
カイロの地方開発予算の大半は、人口密度の低い表の街に優先的に配分されています。最も支援を必要とするインバーバなどのスラムへの予算配分は極端に低く、下水設備の欠如や未舗装の道路など、インフラの崩壊状態が放置されたまま格差が固定化しています。
| 移動手段・エリア | 特徴・アクセス状況 |
|---|---|
| 表の街(富裕層・幹線道路) | タクシーやUberが利用可能。トゥクトゥクの進入は法律で禁止。 |
| スラム(非公式居住区) | トゥクトゥクやマイクロバス(セルビス)が主な移動手段。インフラ未整備。 |
1950年代からの歴史と「赤レンガのむき出し鉄筋」の秘密
アシュワイヤートの歴史と増築ルール
スラムはアラビア語で「アシュワイヤート(無作為な、ランダムな)」と呼ばれます。1950〜60年代のナセル大統領時代の工業化に伴う労働者の流入、1970〜80年代のサダト大統領によるインフィターフ(門戸開放政策)による格差拡大、そして1992年のカイロ大地震で家を失った被災者が流れ込んだことで巨大化しました。
スラムの景観を特徴づける「屋根の上に鉄筋がむき出しの赤レンガ建築」には明確な理由があります。かつて「建物が未完成(建設中)であれば固定資産税を免れる」という法律の抜け穴が存在したためです。また、息子が結婚した際にその上の階に部屋を増築するという歴史的ルールが存在し、常に未完成の状態で放置されています。
シシ政権の強制排除と「立ち退き」に怯える生活
現在のシシ政権は「スラム撲滅」を掲げ、ブルドーザーでアシュワイヤートの破壊を進めています。住民は郊外の「アスマラット」などの画一的な公営団地へ強制移住させられており、スラム時代に培われた仕事や情報交換の相互扶助ネットワークが破壊され、新たな貧困と孤立を生んでいます。
スラムの住人は法的な居住権を持たないため、ある日突然家を壊される「立ち退き」の恐怖と常に隣り合わせの生活を送っています。
エジプト・スラム事情 潜入・観光のためのサバイバル・防犯対策
スリより怖い「私服警察(マバーヘス)」と「バワーブ」の監視網
スラム内の移動手段である三輪タクシー「トゥクトゥク」は、表の街への進入が禁じられています。道路にトゥクトゥクが走り始めたら、「表のルールが通用しないスラムに入った明確なサイン」として認識する必要があります。
また、マンションや通りには「バワーブ」と呼ばれる門番がおり、住人の全行動を把握しています。彼らは警察や地元ギャングへの情報提供者として機能しており、見慣れない外国人が徘徊していれば、数分後にはバワーブ経由で確実に通報される監視網が存在します。
マイクロバスの暗号ハンドサインと空を支配する「鳩小屋」
スラムの住人が利用するボロボロのマイクロバス(セルビス)には行き先を示す看板がありません。乗客と運転手は「指を下に2本向ける」「手を水平に振る」といった独自の手のジェスチャー(ハンドサイン)のみで行き先を確認し合います。
スラムの建物の屋上には、木組みの巨大な「鳩小屋(Gheya)」がそびえ立っています。夕方になると男たちが屋上に登り、自分の鳩を飛ばして他人の鳩を自分の群れに紛れ込ませて奪い合うというギャンブルが日々行われています。
警察不在のスラムを統治する長老裁判「ウルフ」
警察の目が行き届かないスラムの内部では、住民間の金銭トラブルや事件は「ウルフ(Urf)」と呼ばれる地域の長老たちによる非公式な慣習会議で裁かれます。
もし外国人がスラム内で住民と揉め事を起こした場合、正規の警察や法律ではなく、このウルフに引きずり込まれ、独自のルールで高額な賠償を求められる危険性があります。現地でのトラブルは絶対に避けてください。
※レート目安:1エジプトポンド(EGP)=約3.2円(2026年5月現在)




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